これらマウスの実験結果をそのまま人間の居住空間に当てはめることが適切でないことは言うまでもありませんが、人間生活の中でかなりの時間の拘束状況が予想されるわけで、住宅構成材料の選択はとくに慎重に行われるべきでしょう。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 広報コバヤシ(2002.9.25号) ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
人間の住環境に適した材質に関する諸々の実験を知ってますか?
また名古屋大学の研究グループでは同様な実験でマウスの妊娠、出産、哺育と仔の成長について観察したところ、マウスの繁殖状況についてはコンクリートやアルミの飼育箱では哺育が進行せず補食(親が子を食べる)などの異常が発生したのに対し、飼育箱が木で床敷きが木チップの場合は異常は一例も生じなかったとする実験結果など、住空間を形造る素材の違いが生き物に与える影響について報告されています。
この研究は先の静岡大学の研究結果を追試することになり、同大学のデータを裏付ける事になりました。
次に示すデータは、コンクリート製飼育箱の床材に異なった二種類の建材を用いてマウスの休憩する場所の嗜好性の順位を調べた実験結果です。
スギ、または合板>ヒノキ>クッションフロア>塗装合板>コンクリート>アルミの順で、この嗜好性の順位は別に実験したマウスの生存率や内臓の発達の順位とほぼ一致していたという報告です。
この事柄は、材質の熱流量の順位とほぼ一致し、熱流量(床材に熱の奪われる量)の小さいほうがマウスにとって好まれるということを示していると考えられます。すなわち、「体から熱を奪う「冷え」る材料は体に良くない」「においのきついものや吸湿性のないものはよくない。」らしいということを、この小動物の行動原理は語っているということなのです。
飼育箱の材質の違いによる子ねずみの生存率実験
伊藤晴康他:静岡大学農学部研究報告No.3(1986)
成長のスピード(体重の増加)については、生まれた赤ん坊マウスが目を開く開眼日も、木の場合は15.6日、鉄の場合は18.1日、コンクリートの場合は17.9日という結果でした。
また、マウスを解剖し、臓器の発達がどのくらいかを質量で計ったところ、生殖器であるメスマウスの子宮の平均重量は、木の場合では31.66mg、金属が14.36mg、コンクリートが11.53mgというように、大きな差が出ています。生殖機能に悪影響を及ぼすところは環境ホルモンと似ているような気がします。
木製ケージで育ったマウスは生殖器の重量が重いのですが、他のケージで育ったマウスは腎臓に水腫の出来ているものが多く見られました。
さらに、環境が精神的にどのような影響を与えるのかということを調べるのは、実験的に非常に困難なのですが、毎日一定時間、一定の期間にステレオタイプの行動が何回あったかという実験を行ってます。
ステレオタイプの行動というのは、無意味な行動のことで、例えば子マウスが自分の尻尾をやたらと噛み切るといった行動のことを指し示します。これらの行動はストレスやイライラからくるもので、その行動を1時間おきに10日間それぞれ調査したところ、木のケージ
の場合は80回、鉄のケージの場合は230回、コンクリートのケージの場合は290回あったそうです。また、子マウスの脳をX光線で撮ってみると、ストレスのたまり具合いが脳の中に黒く物質化されて写し出されていたといいます。
ネズミの家は木の箱?金属の箱?コンクリートの箱?
1986年、静岡大学農学部で水野教授を中心に、マウスを3種類(木、鉄、コンクリート)の箱の中で飼育し、その生態を観察するという実験が行われています。その実験では、材質の異なる箱(ケージ)を3種類。それぞれ10箱ずつ使って行われました。それぞれのケージの形は縦30cm、横17cm、深さ11cmと内容積は同じ大きさのもので、材質が木材でつくったものと、亜鉛鉄板でつくったものと、鉄筋コンクリートでつくったものと3種類でした。
しばらくの間、オスとメスを別々にそれぞれのケージの中で飼育し、ある時期にオス、メス一緒にして交尾をさせ、子どもを産ませました。生まれてきた子マウスの23日間における様々な生態を数字にまとめています。
それによると、生まれてきた子マウスの23日間の生存率ですが、木のケージで育った子マウスは85.1%、金属のケージでは41.0%、コンクリートの場合は6.9%でした。コンクリートのケージの場合は、130匹生まれてきた子マウスも23日後には9匹しか生き残ることが出来なかったといいます。
「コンクリート飼育箱ではネズミが死んでしまう。」
この話を聞いたとき「なんという短絡的な非科学的な話なのだろう。多分ヒステリックな「木」信奉者がまたわめいているのだろう。」というのが率直な感想だった。
人間にとってどのような住環境が適しているのかという研究で有名なのが、1986年といいますから今から約16年前に静岡大学で行われたマウスを使った実験です。 この実験から導き出された極めてショッキングな考察結果は当時様々なメディアで取り上げられたようですが、この結果をふまえて住宅環境の大きな変革が行われることもなく現在に至っているようです。わが国経済は、1980年代後半に、バブルの発生・拡大、そしてついには崩壊という極めて大きな変動を経験したわけですが、バブル好景気に浮かれていた当時のスクラップアンドビルド社会には受け入れがたい内容であったのかもせれません。
以上の内容はインターネット上で公開されている情報をまとめたものですが、検索エンジンサイトにて「マウス コンクリート」のキーワードで簡単に調べられますので、これから建築計画を考えている方に御一読(?)をお勧めします。
なお記事中で紹介した静岡大学農学部の研究ですが、静岡県木造共同組合連合会から実験報告書として現在でも入手できるそうなので入手出来次第皆様に改めて報告しようと思います。
また愛知教育大のグループによる「木造校舎とRC校舎の比較による学校・校舎内環境の検討」によると
子供の情緒不安定検査の比較、RC造から木造校舎へ移った感想、教師から見た授業中の子供の態度の分析などについて、アンケート調査を行なったうえで「RC造教室の子供たちは、身体の不調を訴える傾向が高く、教師の方も精神的ゆとりを持ちにくい」というデータを導きだしています。
このような調査は他に熊本大学や青森県、栃木県などでも行われており、いずれも共通して木質環境が快適さや健康面、情緒面に良い影響を及ぼすことを示唆しているようです。
教育の現場で木質環境の有効性がやっと認知されつつある
一方では以上のような木質環境に関する先行研究は教育現場で生かされつつあります。木質校舎が児童生徒、教員にどのような影響をもたらすのか、またその
教育効果と木質環境とのメカニズムを明らかにするための基礎的なデータを各自治体は集約しており、木質系の構造用大断面集成梁工法による大規模木造建築物が各地で建造されるに至って、やっと木造校舎や教育施設が復権しつつあるところです。
たとえば
和歌山県などでは平成
11年度「和歌山県における木造校舎に関する調査研究」、松浦善満(和歌山大学) 池際博行(和歌山大学) 高井一治(和歌山県木材協同組合)のなかで木質環境の有効性に関する先行研究について
言及しており、「日本材木学会で報告された木質環境に関する論文ならびに報告書をレビューするとともに静岡大学(佐藤、有馬)、愛知教育大学(高橋、橘田)への踏査を実施した結果、マウスなどの動物による木質環境の有効性が認められた。ここには木質のもつ湿度、温度維持機能があることが一定明らかになっている。
このように動物実験段階では木質環境の有効性が認められている。この点を児童生徒が木質校舎からどのような影響を受けるのかという実証調査への手がかりとしたい。」としている。
さらに木質校舎の学校を踏査して
「木質環境の優位性を前提に、木造校舎を建築した県内外の学校を踏査した。各校の聞き取りに共通していたのは、@木質校舎のもつ暖かい雰囲気、A室温、湿度の安定性(結露がでない)、B児童生徒の怪我の少なさ、という点であった。」とあります。
http://www.wakayama.go.jp/prefg/020100/wakayamagaku/8nakahara.htm

マウスの床材の嗜好性試験
もくざいと教育(日本木材学会編)より抜粋